Kaiserreich zwei wiki - 走れグロタン(ゆば作)
グロタンは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐のポルカスを除かなければならぬと決意した。グロタンには政治がわからぬ。グロタンは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。
けれども素数に対しては、人一倍に敏感であった。
グロタンには父も、母も無い。女房も無い。
十六の、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿して迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。グロタンは、それゆえ、衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。メロスには竹馬の友があった。フェルディナントである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。・・・
「ポルカスは、三枚舌をします。」
「なぜするのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」
「たくさんの秘密外交をしたのか。」
「はい、はじめはスーダンさまを。それから、エジプトを。それから、イランを。それから、スペインを。それから、ドイツを。それから、その他諸々を。」
「おどろいた。ポルトガルは乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下(インド)の心をも、お疑いになり、同盟に入れてくれませんでした。きょうは、同盟が解散しました。」
聞いて、グロタンは激怒した。
「呆れた外交だ。生かして置けぬ。」